哺乳類のY染色体は退化する一方だ。そのうち、男はいなくなる!?南の島のトゲネズミに、そのヒントがあるかもしれない。そのネズミたちは、Yがないのにオスがいる。Yがないなら、雌雄のDNAの差はどこに?あの方法もこの遺伝子も、ハズレ、ハズレ、またハズレ……!立ちはだかる数々の壁を乗り越え、「Yなき性」の謎にせまる。
目次
プロローグ 常識はずれの哺乳類
1 よみがえるトゲネズミ
謎の哺乳類と出会う
Yのないネズミ──1977年の報告
古すぎる細胞でスタート
運命の出会い
絶滅危惧種と天然記念物
立ちはだかる壁
心落ち着かないクリスマス
野外調査に参加……したけれど
オキナワトゲネズミはどこに
たった3体の剥製標本
捕獲調査がはじまる
幻の哺乳類、再発見
Yはあった、でも、普通じゃなかった
2 Y染色体を失うということ
「性が決まる」とはどういうことか
染色体は運命を「決定」しない
哺乳類のY染色体──オスをオスたらしめる
大野博士の仮説
誰が先に見つけるか──性決定遺伝子発見競争
そしてSRYが見つかる
SRY遺伝子の正体
実は弱くて刹那的
2つあったエクソン
カモノハシの性の謎
SRYいつ登場したか
YがYになったとき
Yが退化していく理由
Yが消える!?
Y染色体の沼にハマる
3 消失と巨大化──ネズミ、真逆の道をゆく
緊張の初代培養
アマミトゲネズミ──少なくて長い染色体
1本だけ残る不思議
染色体を染めてみる
なかなか見つからない性差
やはり性差は見つからない
「ない」証明の難しさ
オキナワトゲネズミ──大量にあるSry
Sryは性を決定しているのか?
消失と巨大化──真逆の進化の不思議
コラム◎思わぬ発見──移動するセントロメア
4 消えたYの謎を追う
遺伝子重複に目をつける
シャルトルの仮説
重要なものほどコロコロ代わる
メダカの性決定遺伝子も「遺伝子重複」
まずは10の遺伝子を探す
それらしき重複遺伝子、しかし……
個体数の少なさゆえに
コラム◎マングースの研究では
やはりゲノムを読むべきか
ゲノム解読への道①──まず読んではみるものの、途方に暮れる
ゲノム解読への道②──予算獲得
コラム◎忘れられない大きな失敗
ゲノム解読への道③──「支援課題」になる
一塩基多型を探せ
最後に残った二つの候補
SOX9遺伝子とは
「砂漠」でターゲットを探す
やっぱりSOX9上流が重要?
マウスのエンハンサーが、トゲネズミにも
エンハンサーが性決定!?
「重複」をマウスにノックイン
青く染まった生殖腺
教授、PCRマシーンと化す
起こらなかった性転換
性転換の「萌芽」はあった
5 世界に羽ばたくトゲネズミ
アクセプトまでのさらなる道のり
「強さ」ではなく「スキル」
レジェンドからの助言
アクセプトされるや一転……
報道解禁、そして
「あなたの研究を知っていますよ」
トゲネズミがつないだ世界
エピローグ トゲネズミのいま
著者プロフィール
黒岩 麻里 (クロイワ アサト) (著)
黒岩麻里(くろいわ・あさと)
1973年京都市生まれ。2002年名古屋大学大学院生命農学研究科博士課程修了。博士(農学)。2016年より北海道大学大学院理学研究院教授。小説家やジャーナリストに憧れる文系少女だったが,高校の授業で生物に目覚め,一念発起して理転。一浪を経て名古屋大学農学部へ入学。博士課程から北海道大学へ移り,トゲネズミと出会う。幼少期から生き物を飼うのが好きで,飼育した生物種数は100を超える。現在は北海道犬とサイベリアンのお世話で手一杯である。趣味は道内を巡り美味しいものを食べ,お酒を吞むこと。好物はラーメンとスープカレー。著書に『「Y」の悲劇 男たちが直面するY染色体消滅の真実』(朝日新聞出版)などがある。
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