近代日本の政治は、江戸期の上意下達から、身分不問で意見を戦わせて公共の利益に適う合意形成を行っていく「公議」による決定に変わった。そして、この公議の場こそ国会議事堂だった。
1890年に創られた仮議事堂で帝国議会は開会するが、一つの場での議論が不慣れだった日本人はここから政治をどのように組み立ててようとしたのか――。仮議事堂が2回全焼するなか、恒久的な国会議事堂創設までには、西欧普遍のスタイルか「日本性」追求かなど政治家、官僚、建築学者を巻き込み一大議論となっていく。
では、1936年に完成した現在の国会議事堂は、どのような意図のもとに創られ、また日本政治はこの器のなかで、どのように展開されていったのか――。
日本政治は、政治家をはじめとして人物を中心に描かれてきた。本書もそれを重んじつつ、国会議事堂という「政治=空間」に注目する。世界各国で政治は、空間に見合った形で展開されているからだ。空間が政治を規定するのでもなく、その逆でもなく、両者が相伴って形成しているからだ。
本書は、150年以上に及ぶ日本の公議の軌跡=日本政治について、「政治=空間」という新しい視点から、通史として描く試みである。
著者プロフィール
佐藤信 (サトウシン) (著)
1988年奈良県生まれ。2011年東京大学法学部卒業、15年東京大学大学院法学政治学研究科総合法政専攻博士後期課程中途退学。博士(学術)。東京大学先端科学技術研究センター助教、東京都立大学法学部准教授を経て、26年より教授。専攻は日本政治外交史、現代日本政治。
著書に『鈴木茂三郎1893-1970』(藤原書店、2011年 河上肇賞奨励賞)、『60年代のリアル』(ミネルヴァ書房、2011年)、『日本婚活思想史序説』(東洋経済新報社、2019年)、『近代日本の統治と空間』(東京大学出版会、2020年)。編著に『オーラル・ヒストリー入門』(筑摩書房、2025年)。