朝鮮モダニズム文学を代表する作家・朴泰遠(パク・テウォン)による自伝的都市小説を、李箱(イ・サン)による挿絵とともに書籍化!
解説=斎藤真理子
1930年代、京城(現ソウル)。
定職につかず、結婚相手も見つからず母に心配されている小説家の仇甫(クボ)。
ステッキとノートを手に、百貨店へ、喫茶店へと、街をさまよい歩く……。
韓国発のオンラインゲーム《リンバス・カンパニー》でも話題!
ゲームに登場するキャラクター「イサン」「クボ」のモチーフになっていることでも近年注目を集めている李箱と朴泰遠。
韓国・朝鮮文学ファンにいまなお支持される朴泰遠の不朽の名作が、作品が発表された新聞連載時の李箱の挿絵とともに蘇ります。
巻末には、作中に登場する地名・主要施設名を記した1930年代の京城地図を収録。
著者プロフィール
朴 泰遠 (パク テウォン) (著)
[著]朴泰遠(パク・テウォン)
1910年(陰暦では1909年)、京城(現ソウル)生まれ。父は清渓川沿いの茶屋町(現、茶洞)で薬局を経営し、隣では叔父が病院を開業していた。文芸を好むこの叔父の書斎で触れた文芸書が幼い泰遠を文学の道へと導いた。生粋のソウルっ子で、1930年から1年あまり法政大学に在籍していたこともあり、「モダンボーイ」と称された。号は「仇甫(クボ)」。1933年には金起林、李泰俊、鄭芝溶らが中心となったモダニズム文学団体「九人会」に参加した。1934年に『朝鮮中央日報』に「小説家仇甫氏の一日」を連載。この時期の代表作としてはほかに、当時は洗濯場が設けられていた清渓川に集まる庶民たちの哀歓を描いた長編「川辺の風景」がある。1950年、朝鮮戦争勃発直後に北へ渡り、その後は北朝鮮の体制の下で執筆活動を続けた。1986年没。
李 箱 (イ サン) (絵)
[絵]李箱(イ・サン)
1910年、京城(現ソウル)生まれ。本名は金海卿。朝鮮総督府で技師として働き、その後は喫茶店の経営などを行いながら美術と文筆において創作活動を続けた。1930年に長編小説「12月12日」を『朝鮮』に連載し作家活動を始め、『朝鮮と建築』誌に日本語詩「異常な可逆反応」などを発表。1934年にモダニズム文学団体「九人会」に参加。同年、『朝鮮中央日報』に詩「烏瞰図」を連載するが、批判を受け打ち切られる。その後、短編小説「蜘蛛、豚に会う」「翼」「逢別記」「童骸」を発表、1936年に日本に渡ってからも短編「終生記」などを発表した。日本滞在中の1937年に検挙・拘禁されたが、結核が悪化して保釈され、東京帝国大学病院で病没した。
山田 佳子 (ヤマダ ヨシコ) (訳)
[訳]山田佳子(やまだ・よしこ)
新潟県立大学名誉教授。専門は朝鮮近代文学、特に女性作家、崔貞煕、朴花城。共訳書に『現代韓国短篇選』上・下(岩波書店、2002年)、朴泰遠ほか『短編小説集 小説家仇甫氏の一日 ほか十三編』(朝鮮近代文学選集3、平凡社、2006年)など。論文に「崔貞熙の作品集『風流ただよう村』について」(2003年)、「崔貞熙の植民地末期小説研究」(2004年)、「崔貞熙―小説家への道のり」(2005年)、「習作期の崔貞熙」(2005年)、「朴花城の植民地期の作品と舞台について」(2006年)、「朴花城の長篇小説『白花』について」(2009年)、「崔貞煕の植民地末期における時局関連作品」(2016年)など。