或る出来事--しかも、暴力的な--体験を言葉で語ることは果たして可能だろうか。もし不可能なら、その者の死とともにその出来事は、起こらなかったものとして歴史の闇に葬られてしまうだろう。出来事の記憶が、人間の死を越えて生き延びるために、それは語られねばならない。だが、誰が、どのように語り得るのだろうか。
目次
はじめに――記憶を分有するために
Ⅰ 記憶の表象と物語の限界
第1章 記憶の主体
1 到来する記憶
2 余剰と暴力
第2章 出来事の表象
1 小説という語り
2 表象しうる現実の外部
第3章 物語の陥穿
1 虚構のリアリズム
2 出来事の現実
3 物語への欲望
4 物語の欺瞞/欺瞞の物語
5 否認される他者
第4章 記憶のポリティクス
1 傷痍兵という出来事
2 記憶を語るということ
3 否認の共犯者
Ⅱ 表象の不可能性を超えて
第1章 転移する記憶
1 外部の他者へ至る道筋
2 ヘル・ウィズ・ベイブ・ルース
第2章 領有することの不可能性
1 封印される余剰
2 偽りのプロット
3 単独性・痕跡・他者
第3章 出来事を生きる
1 出来事の帰属
2 難民的生の生成
Ⅲ 基本文献案内
あとがき
著者プロフィール
岡 真理 (オカ マリ) (著)
岡?真理(おか・まり)
1960年生まれ.東京外国語大学大学院修士課程修了.専門は現代アラブ文学,パレスチナ問題.早稲田大学文学学術院教授,京都大学名誉教授.著書に『彼女の「正しい」名前とは何か』(青土社,2000年/新装版2019年),『棗椰子の木陰で』(青土社,2006年/新装版2022年),『アラブ,祈りとしての文学』(みすず書房,2008年/新装版2015年),『ガザに地下鉄が走る日』(みすず書房,2018年),『ガザとは何か』(大和書房,2023年/増補版2026年)ほか.訳書に,エドワード・W.サイード『イスラム報道 増補版』(共訳,みすず書房,2003年/新装版2018年),ターハル・ベン=ジェッルーン『火によって』(以文社,2012年),イザベラ・ハンマード『見知らぬ人を認識する』(みすず書房,2025年)ほか.
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