本書は、女子高等教育を通じて、男性権力の構造と性差別の再生産の仕組みを「ポジショナリティ」概念から分析する。歴史的な女子教育の検討、父性論・男性学言説の分析を通じて、男性の集団的利害の背景化とその隠蔽の手法を明らかにする。さらに、承認・親密性・《ファルス》・リスクなどの概念を用いて、性差別を支えるロジックと行為の相互作用を解明し、ポジショナリティの可視化と女性同士の支援基盤の形成を課題として提示する。
目次
はじめに――ポジショナリティからみるジェンダー
1 本書の目的
2 ジェンダー領域をポジショナリティから検討する意義
3 本書の位置づけと構成
序章 ポジショナリティの認識構造とジェンダー文脈における枠組み
1 ポジショナリティ論の領域
2 ポジショナリティ論の系譜
3 ポジショナリティの構造と特徴
4 ジェンダーとポジショナリティ
第一章 女子大学に勤務する男性教員のポジショナリティ
1 女子教育と男性教員
2 女子教育への視線
3 女子大への視線
4 女子大生をめぐるポリティクス
5 男性教員の政治的存在意義
第二章 “ご同輩”との対話は可能か?――男性とポジショナリティ
1 “ご同輩”の絆?
2 男性の定位とその否認
3 男性の集団的利害とポジショナリティ
4 男性による、男性の記述
第三章 “ご同輩”とのポジショナリティの共有
1 男性学と言説のポリティクス――肩の荷降ろせ論
2 男性性の複数性と女性の共犯者化
3 男性権力学(仮称)に向けて
第四章 性差のポジショナリティと承認問題
1 ポストコロニアリズムとジェンダー問題
2 承認とポストコロニアリズム
3 他者承認の隘路
4 人格的承認をめぐる闘争
5 性支配解消への価値判断
第五章 モノガミーと親密性をめぐる歴史的事例
1 モノガミーと親密性についての歴史的経験――「多角恋愛」という“実験”
2 「多角恋愛」をめぐる問題点
3 モノガミーをめぐるポリティクス
第六章 《ファルス》の作用点と性差権力の維持
1 《ファルス》再考
2 「悪女」とは誰か?
3 《ファルス》と承認の契機
4 《ファルス》と親密性
5 “コビコビ戦略”と男性たちの連携
6 承認再考――小括に代えて
第七章 ジェンダー、リスク、跳躍。
1 ジェンダー・アティチュード再考
2 親密性とミソジニー再考
3 想像力に対する劣等コンプレックスと学習性無力感の影響
4 ジェンダー論とリスク
5 リスクと真正性
6 ポジショナリティと跳躍
第八章 女子大教員の異常な愛情――または私は如何にして“教える”のを止めて戦場を愛するようになったか
1 女子大教員はジェンダーの夢をみるか?
2 とまどいの日々
3 女子大という“戦場”
4 女性相互支援基盤の形成へ向けて
おわりに
文献一覧
事項索引
人名索引
前書きなど
はじめに――ポジショナリティからみるジェンダー
1 本書の目的
本書は、ポジショナリティという概念を軸に、ジェンダーをめぐる諸問題に現れる権力作用を検討するものである。そこで問題とされるのは、両性のあいだに存在している集団的な権力関係と、それが個人間に反映・投射された権力作用である。本書では、男と女という二つの性別カテゴリー間に設定されている権力関係が、それぞれに属する個人のあいだでどのように現れ、再生産されているのかについて、ポジショナリティという視点を通じて検討する。
その際に手がかりとなるのは、女子教育である。なぜジェンダー領域におけるポジショナリティを検討するのに女子教育が入り口となりうるのかといえば、女性に対する教育のありようには、あたかも社会一般における女性に対する男性たちの権力的態度の縮図といえるような側面が存在するからである。
(…後略…)
著者プロフィール
池田 緑 (イケダ ミドリ) (著)
大妻女子大学社会情報学部准教授
慶應義塾大学大学院社会学研究科後期博士課程単位取得退学(2000年)。専門は、社会学、ポジショナリティ研究、コロニアリズム(ポストコロニアリズム)研究(沖縄と日本の関係を中心に)、ジェンダー研究(男性権力を中心に)。
ポジショナリティを共通の基盤概念として、「沖縄と日本の関係」と「ジェンダー関連領域」を中心に、それらの領域を相互に検討しながら権力作用を分析。ジェンダー領域では、男性による女性への支配権力作用を焦点化して、ポジショナリティの視角を通じた分析を女子教育や男性による言説の検討などから行い、性差を超えた協働と対話の可能性を探る研究を行っている。
主著:『植民者へ――ポストコロニアリズムという挑発』(共著、松籟社、2007年)、『ポジショナリティ――射程と社会学的系譜』(勁草書房、2023年)、『日本社会とポジショナリティ――沖縄と日本との関係、多文化社会化、ジェンダーの領域からみえるもの』(編著、明石書店、2024年)、『ジェンダーの考え方――権力とポジショナリティから考える入門書』(青弓社、2024年)、『ポジショナリティ入門――個人間に現れる集団の権力を読み解く』(白澤社、2025年)、『ポジショナリティと〈日沖関係〉――沖縄と日本の権力構造、集団的利害と責任の様態を問い直す』(明石書店、2025年、本書と同時刊行)ほか。
その他のアイテム
-
- 『すごくてヤバい恐竜図鑑』平山廉(監修) 発行:カンゼン
- ¥1,320
-
- 『ユニヴァースのこども 性と生のあいだ』中井 敦子(著)森岡 素直(著) 発行:創元社
- ¥1,870
-
- 『日本に現れたオーロラの謎 時空を超えて読み解く「赤気」の記録』片岡 龍峰(著) 発行:化学同人
- ¥1,650
-
- 『努力は仕組み化できる 自分も・他人も「やるべきこと」が無理なく続く努力の行動経済学』山根承子
- ¥1,870
-
- 『視線と差異 フェミニズムで読む美術史』グリゼルダ・ポロック(著)萩原 弘子(翻訳) 発行:筑摩書房
- ¥1,870
-
- 『 生きものは遊んで進化する』デイヴィッド・トゥーミー(著)梅田 智世(訳) 発行:河出書房新社
- ¥2,475