大人になるのって、こんなにも難しい!
テムズ川河口域の村に暮らす少年ピップは、美しい少女エステラと出会い、やがて莫大な財産の受取人に選ばれ、ジェントルマンとなるべくロンドンへと向かう――。19世紀イギリスを代表する作家ディケンズの『大いなる遺産』は、主人公の成長と立身出世を描く「教養小説(ビルドゥングスロマン)」の名作として長く親しまれてきた。だが、他の教養小説と比較して、ピップの成長にはどこか回りくどさや奇妙さがつきまとう。
ピップの成功と挫折から見えてくるのは、当時のイギリスで浮上していた階級社会や実力主義社会、そしてジェンダーの問題だ。彼の歩みを読み解きながら、真の成長とは何か、社会の中で生きるとはどういうことかを考える。
著者プロフィール
河野 真太郎 (コウノ シンタロウ) (著)
英文学者。1974年山口県生まれ。専修大学国際コミュニケーション学部教授。東京大学大学院人文社会系研究科欧米系文化研究専攻博士課程満期退学。博士(学術)。専門はイギリスの文化と社会。著書に『新しい声を聞くぼくたち』(講談社)、『増補 戦う姫、働く少女』(ちくま文庫)、『正義はどこへ行くのか 映画・アニメで読み解く「ヒーロー」』(集英社新書)、『不完全な社会をめぐる映画対話 映画について語り始めるために』(西口想との共著、堀之内出版)、『ぼっちのままで居場所を見つける 孤独許容社会へ』(ちくまプリマ―新書)など多数。訳書に『民主主義 終わりなき包摂のゆくえ』(ナオミ・ザック著、白水社)、『反メリトクラシー 新自由主義と平等の神話』(ジョー・リトラー著、人文書院)など多数。