「私の住居は六畳一間に四畳半ほどのキッチンとやら。そのキッチンの棚、卓上、椅子も一つだけを残し、すべて印刷物の占領下にある。」長く家族を養った先で、ついに手にした自分の部屋での自分の暮し。生きる限りは鼓動が続く。傷の記憶も世の不合理も消えずとも、人と話し、ものを食べ、地を歩き、故郷とかつての日々をおもう。戦火をくぐって時代に臨んだ詩人の名随筆集。
解説 蜂飼耳
カバーデザイン 小川恵子(瀬戸内デザイン)
カバー画 いぬいかずと
目次
Ⅰ 花いちもんめ
時の名称/しつけ糸/会社をやめたら/絵柄人柄/雪谷/気になったことふたつ 他
Ⅱ その角の向うに
運動会の空/籠の鳥/美顔/冬の案山子/梅が咲きました/子供一同/一粒の米も、私も 他
Ⅲ 松崎
「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」の頃/自作について/私の名前/思い出が着ている/悲しみと同量の喜び/伊豆と私 他
あとがき/文庫版あとがき/解説 蜂飼耳
著者プロフィール
石垣 りん (イシガキ リン) (著)
石垣 りん(いしがき・りん):1920年、東京生まれ。詩人。2004年没。高等小学校時代から詩作を始め、少女雑誌に投稿。卒業後、14歳で日本興業銀行に就職し、25歳の時に敗戦を迎えた。1938年、同人誌「断層」創刊。福田正夫に師事する。1959年、第一詩集『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』刊行。1969年に第二詩集『表札など』でH氏賞、1972年に『石垣りん詩集』で田村俊子賞、1979年に『略歴』で地球賞をそれぞれ受賞。エッセイに『ユーモアの鎖国』『焔に手をかざして』『夜の太鼓』などがある。