中国語に由来する、日本の漢字の音読み。
たとえば「行」という字にはコウ、ギョウ、アンと読み方が三種類もある。なぜこんなに複雑なのか――。
遣唐使がもたらした漢音、仏教用語に多い呉音、同じ仏教でも禅宗にまつわる唐音。
これらの音が日本に伝来した時代や経路、定着した経緯を、音韻史の専門家がわかりやすく解説。現在の体系ができあがった歴史的背景を明らかにする。
ややこしくて面白い、音読みの世界への招待。
目次
はじめに
序章 漢字の音読みとは
漢字の「読み」はたくさん?/中国からやってきた漢字/呉音・漢音・唐音の違い/ちょっと変わった唐音/漢字は表語文字/六書と表語・表音/音読みと訓読みの由来/訓読みは漢文の訓読から/漢字で和語を表した万葉仮名/複数の音があるのは日本だけ?/中国語諸方言/漢字文化圏/漢文訓読の起源と展開/台湾の訓読み
第一章 仏教経典とともに――呉音
呉音で読まれる語/最初は呉音ではなかった?/和音と対馬音/中国の呉音と日本の呉音/呉音伝来の経緯/当時の中国南方音/呉音の声調に関する言説/呉音には複数の層がある/万葉仮名と「古音」/仏教と漢音奨励/音読された仏教経典/仏典の字音点と音義/さまざまな法華経音義/音義と古辞書
第二章 遣唐使とともに――漢音
最初は漢音ではなかった?/唐代の長安音/遣唐使がもたらしたもの/日本語として定着した漢語/漢音の声調について/漢音の日本語音化/儒学で学習された漢音/音読と訓読/漢音の資料/仏教教学と漢音/さらに新しい新漢音
第三章 禅宗とともに――唐音
意外に多い唐音語/呉音・漢音との違い/中国宋・元・明代の漢字音/当時の中国との交流/新仏教としての禅宗/禅宗と漢籍/『聚分韻略』/江戸時代の禅宗/江戸時代の唐音学習/中世唐音と近世唐音
第四章 中国語音韻学
中国語音について/中国語諸方言音/中国語音韻史/詩文押韻の規範となった韻書/反切について/詩作のルール/切韻系韻書以後の韻書/漢字を図面で表した韻図/中古中国語音の音価推定
第五章 江戸時代の漢字の音整備
漢語の仮名遣い/「宝」の仮名遣い/「明」「寧」の漢音/漢音・呉音の区別の実際/漢音・呉音の認識/伝統音と韻書の音との狭間/『韻鏡』による漢字音整備/文雄の『韻鏡』研究/本居宣長と字音仮名遣い/人為的な漢音・呉音の区別/漢音・呉音から外れた俗音
終章 作られた漢音・呉音の枠組み
漢和辞典の漢音・呉音/明治時代の漢和辞典/日本版『康熙字典』/台湾語研究と漢字音/東アジアにおける流れ/漢字音の蒐集と整理/漢音・呉音の規範と実際/慣用音について
あとがき
参考文献
著者プロフィール
中澤信幸 (ナカザワノブユキ) (著)
山形大学人文社会科学部教授。1971年生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。大島商船高等専門学校准教授などを経て現職。専門分野は日本漢字音研究史、日本語音韻史、中国語音韻史。著書に『中近世日本における韻書受容の研究』(おうふう)など。
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