木から石炭、石炭から石油、石油から次のステージへ。エネルギー史ではこのような段階論的トランジション(転換)が定説となっているが、それは誤りである。
人類が消費するエネルギーは、低次から高次へ転換してきたのではない。機関車の多くは石炭よりも木を燃やし、炭坑の支柱は膨大な木を使った。今でも、石油生産に必要な鋼鉄、自動車道のセメント、地域によってはプラスチックも石炭で作られる。〈伝統的〉な燃料は、今も大量に消費されている。なぜなら各種エネルギーは共存関係にあり、旧が新で置き換わる関係にはないからだ。どの消費量もひたすら増え続け、それは今、史上最大レベルにある。
本書はエネルギートランジション説が単なる神話だったことを実証しているが、その欠陥は初歩段階ですでに明らかだった。にもかかわらず、あたかも真実のように受容されたのはなぜか。本書はその疑問にも答え、焦点を原子力推進に当てる。
トランジション説は、次段階のイノベーションが気候危機を解決するという先送り策を正当化してきた。しかしそれは夢想にすぎない。英『エコノミスト』誌、英『フィナンシャルタイムズ』紙ベストブックス2024選出。仏政治環境学財団政治環境学賞、仏上院歴史書賞、仏経済財務省協賛テュルゴ賞審査員賞受賞。『人新世とは何か』共著者による話題の最新刊。
目次
はじめに――エネルギー共生の歴史
第1章 ロウソクの光
第2章 「の時代」――物質によるフェーズ分けとその問題
第3章 石炭の歴史(それはほんとうは木の……)
第4章 木造の宮殿
第5章 炭素結合
第6章 カーボン・ファラシー(Carbon Fallacy)――炭素についての誤った考え
第7章 成長を支える根
第8章 木材の石油化
第9章 テクノクラシー・インク
第10章 原子力のマルサス主義者たち
第11章 エネルギー危機の創造
第12章 テクノロジーというカード
結び――歴史の重要性
原注
著者プロフィール
ジャン=バティスト・フレソズ (ジャンバティスト フレソズ) (原著)
(Jean-Baptiste Fressoz)
1977年生まれ。専門は科学史、技術史、環境史。インペリアル・カレッジ・ロンドン准教授を経て、現在フランス国立科学研究センター(CNRS)研究部長。社会科学高等研究院(EHESS)環境史部門(GRHEN)研究責任者。国立土木学校教授。単著にL’apocalypse joyeuse. Une histoire du risque technologique, Paris, Le Seuil, 2012, 2020。共著にL’?v?nement Anthropoc?ne. La Terre l’histoire et nous, Paris, Le Seuil, 2013, 2016(共著者C. Bonneuil。6か国語に翻訳。日本語版は『人新世とは何か――〈地球と人類の時代〉の思想史』野坂しおり訳、青土社、2022年)がある。本書『ひたすら、さらに、もっと』は『エコノミスト』誌、『フィナンシャルタイムズ』紙ベストブックス2024に選出。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
太田佐絵子 (オオタ サエコ) (訳)
(おおた・さえこ)
1981年早稲田大学第一文学部フランス文学専攻卒業。訳書 ヴァンサン・モテ『スケープゴートが変えた世界史(上・下)』(原書房、2025)、アナイグ・オワリー『地図とデータで見る港と海岸線の世界ハンドブック』(同上)ほか。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
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