「身近な人や大切な存在を自死・自殺で亡くした人、喪失を経験したあとの世界を生きている人、そうした人のそばにいて助けになりたいと思う人に、この本が届いてほしいと願っています。」(森本康平「はじめに」より)
「自分の生きてきた人生を人に話すこと、同じような苦しみを抱えてきた人たちの言葉に耳を傾けること。活動のなかで繰り返してきたその営みが、断絶しばらばらになった自分の人生をつなぎ直してくれたように思います。」(よだか「おわりに」より)
子どもの頃に自死で母親を亡くした若者二人によって始められた活動「wish you were here」。この活動名には、「亡くなった人に、今もそばにいてほしかったという思いと、大切な人に先立たれた人にも、仲間になってもらって、一緒に支え合って生きのびていきたいという思い」が込められています。本書では、彼らがこの活動にいたるまでのことや、活動を通して経験したことや考えたこと、自死による死別やグリーフにかんする様々なテーマについて今思うことなどが語られています。
「Ⅰ 対話による気づきと心の変化」では、2024年6月~2025年6月に創元社note部で連載された、森本康平さんによる「大切な人の自死とグリーフをめぐる語り合い――wish you were hereの対話を通して」の記事を一部修正して収録しています。ここには、森本さんがwish you were hereの活動などを通して自死について考えてきたことが綴られています。
「Ⅱ 身近な人の自死とグリーフをめぐる対話」では、2025年11月に行われたオンラインセミナー「大切な人の自死とグリーフをめぐる語り合い」の模様を収録しています。森本さんに加え、森本さんとともに活動してきたよだかさん、さらに自死遺族支援などの活動に長年携わる尾角光美さん(一般社団法人リヴオン代表理事)の三人による語り合い、さらに参加者の方の質問・コメントへの応答が行われています。
目次
はじめに
I 対話による気づきと心の変化……森本康平
第1回 母の死が自殺だったと知ってから
第2回 墓参りで母に語りかける習慣
第3回 「似た境遇の人とつながって、一緒に生きのびたい。」
第4回 自殺を語りづらい社会で、遺された人どうしが出会えるように
第5回 stand.fmやPodcastから広がるご遺族の方たちとのつながり
第6回 自殺は特別な死なのか
第7回 Iさんとの話
第8回 自殺と呼ぶか、自死と呼ぶか
第9回 遺された自分は幸せになってはいけないのか
――セルフスティグマについて
第10回 セルフスティグマが薄れていくまでのこと
第11回 自死遺児支援とセルフヘルプグループの語り
第12回 種をまく
II 身近な人の自死とグリーフをめぐる対話……森本康平/よだか/尾角光美
自己紹介
第1部 「wish you were here」をめぐる対話
「wish you were here」という活動について/「wish you were here」の活動を始めてからこれまでのこと/note連載への反響を受けて/連載を読んで思ったこと/二つの対話/「自死」は特別な死なのか/自死遺族としてのアイデンティティ/「タブー」(「セルフスティグマ」)という問題/自分が変化することについて
第2部 尾角光美さんとの対話
「孤独」の苦しみ/リヴオンの活動/お母さんへの思い/「大切な人」について語ること/セルフケアについて/グリーフを大切にする時間/亡くなった方の存在/リヴオンの活動のこれから/「wish you were here」について
参加者からの質問・コメントを受けて
おわりに
著者プロフィール
森本 康平 (モリモト コウヘイ) (著)
1992年生まれ。大学卒業後デンマークで社会福祉を学んだのち、障害のある人の生活支援やNPO勤務、柿収穫の季節アルバイト等を経て、現在は奈良市北東部の月ヶ瀬地域で働く。2021年11月、自死遺族の友人(よだかさん)が始めた対話の活動に参加。ほかにACE(小児期逆境体験)を経験した大人のセルフヘルプグループの運営や、一般社団法人リヴオンの「大切な人を亡くした若者のつどいば」、NPO法人あわひにも関わる。精神保健福祉士。趣味は散歩と旅行と図書館めぐり。手帳は紙派。
よだか (ヨダカ) (著)
1993年生まれ。精神保健福祉士。10歳のときに母を自死で亡くす。2021年11月に大学時代の友人(森本さん)とともに「wish you were here」の活動を始める。現在は、民間団体において教育相談・自殺相談事業に従事している。また、一般社団法人リヴオンでいのちの授業認定講師や「大切な人を亡くした若者のつどいば」スタッフとしても活動している。趣味は裁縫と編み物と恋愛リアリティーショー鑑賞。
尾角 光美 (オカク テルミ) (著)
1983年生まれ。一般社団法人リヴオン代表理事。英国バース大学 死と社会センター 博士候補生。19歳で母を自殺により亡くす。2006年自殺対策基本法制定以後、全国で自死遺族支援、自殺予防の講演等の講師を務める。2009年「グリーフサポートが当たり前にある社会」の実現を目指してリヴオン設立。2018年ヨーク大学にて自死遺族支援の日英比較を論文に著し、国際比較社会政策修士号取得。2023年よりPodcast「ゆるやか死生学」を配信中。「全国自死遺児500人調査」を実施している。趣味は、空の写真を撮ることと大きな木のそばにいること。