世界史の裏側はこんなにも暗い――
アフリカから一二〇〇万もの黒人が強制連行され売買された大西洋奴隷貿易。ほかにも古代ローマ、イスラーム世界、ブラジルやアメリカ、中国、そして日本を含め、あらゆる文明において奴隷制が存在した。歴史上、奴隷制は一八八八年を最後に廃止されたが、今でも多くの地域に自由を奪われた人々がいる。世界史は、惨たらしい扱いを受けた貧しい奴隷たちの歴史と共に形づくられてきた。強制労働、虐待、性的搾取――隠された支配と抵抗の痕跡を辿り、いまなお続く人類史の欺瞞を暴く。
目次
はじめに
森?外『山椒大夫』/奴隷となった安寿と厨子王/厨子王の逃亡/奴隷とは/いま奴隷制を考えることの意味/本書の構成
第一章 古代ローマの奴隷制――本格的奴隷制のはじまり
本格的奴隷制のはじまり/古代ローマの政治体制/ローマの軍隊/ポエニ戦争/ローマの支配拡大と奴隷の流入/グラックス兄弟の改革/シチリアにおける奴隷叛乱/剣闘士奴隷スパルタクスの苦悩/スパルタクスの叛乱/カエサルの『ガリア戦記』/家内奴隷/女性の奴隷と解放奴隷/エリート奴隷の存在
第二章 イスラーム世界の奴隷制――文明を越えて
イスラーム教の誕生/イスラーム世界の拡大と奴隷制/主人と奴隷との関係/アッバース朝カリフとその腹心/黒人奴隷ザンジュの叛乱/奴隷購入のルート/マムルーク/中央アジアのトルコ人/マムルーク朝の誕生/女性奴隷の立場/ハレムと宦官、奴隷少年/サトウキビと砂糖/イスラーム文明とヨーロッパ文明の交流
第三章 ブラジルにおける奴隷制――砂糖プランテーションの形成
地中海から大西洋へ/イタリア人の役割/大西洋奴隷貿易の始まり/コロンブスの「新世界」発見/先住民インディオの人口崩壊/アシエント奴隷貿易/ブラジルの発見とパウ・ブラジル貿易/カピタニア制の導入と砂糖プランテーション/先住民の叛乱/総督制のもとでの先住民の奴隷化/黒人奴隷制への移行/砂糖革命
第四章 アメリカ合衆国南部における奴隷制――綿花プランテーションの発展
チェサピーク湾沿岸のタバコプランテーション/米作・藍作プランテーション/イギリス綿工業の発展/アメリカ合衆国南部の綿花プランテーションの拡大/「奴隷飼育業」と奴隷制の拡大/奴隷叛乱と解放への道
第五章 中国の宦官――皇帝と臣民の媒介者
中国の奴隷制/いかにして宦官となるか/皇帝と宦官の密接な結びつき/明の宦官/鄭和の海外遠征/宦官の学校と王振/究極の奴隷
第六章 日本の奴隷制――奴婢から「からゆきさん」まで
奴婢/寛喜の大飢饉と人身売買/倭寇による人間の略奪/戦国時代における乱取り/豊臣時代の日本人奴隷/日本人奴隷とポルトガル商人/ガスパール・フェルナンデス・ハポンの事例/からゆきさん
第七章 現代の奴隷制――解放されない人びと
現代の新奴隷制/スィリという少女/コートジボワールのカカオ農園/ブラジルの奴隷制撲滅国家計画/児童婚のリアル/現代奴隷法
終章 世界史のなかの奴隷制
奴隷は商品か/奴隷解放の意味/世界史のなかの奴隷制/尊厳をとりもどすための闘い
あとがき
著者プロフィール
布留川 正博 (フルガワ マサヒロ) (著)
布留川 正博(ふるがわ・まさひろ):1950年奈良県生まれ。同志社大学名誉教授。1973年大阪大学基礎工学部卒業。民間企業勤務を経て、同志社大学大学院経済学研究科博士後期課程退学。博士(経済学)。専門は大西洋奴隷貿易史・近代奴隷制史。著書『奴隷船の世界史』(岩波新書)、『イギリスにおける奴隷貿易と奴隷制の廃止――環大西洋世界のなかで』(有斐閣)、『岩波講座 世界歴史〈15〉 商人と市場――ネットワークの中の国家』(共著、岩波書店)、『ラテンアメリカをめぐるグローバル経済圏――「潮と風」と帆船によるポルトガル・スぺインのネットワーク』(共著、明石書店)、『近代世界と奴隷制――大西洋システムの中で』(共著、人文書院)など。