子どもん頃。
うちには母の友人達がしょっちゅう遊びに来とったけど、わたしはたぶん、この人に一番なついていた。
うちに遊びに来る、母と母の彼女の友人達には、女の人が好きな女の人も、男の人が好きな男の人も、男の人が好きな女の人も、どっちのことも好きな人も、どちらでもない恋人がおる人もおったけど。
多聞(たもん)みたいな人はーー。
いつだって一人で、口を開けば多聞にしか見えない友達のことばかり。
妖精、妖怪、ぼうちに魔女。
人間よりも、幽霊やおばけが好きな人。
こんな妙な大人は多聞だけ。
多聞、あのおかしな人だけだった。
★
他の人には見えない、人ならざるものとの会話を愉しむ、妙な大人、“多聞”。
レズビアンの母達と暮らし、誰を愛しても祝福される環境で、誰のことも恋愛として愛することができないと悩む、“内日(うつい)さん”。
そして、内日さんの呼びかけに応え出現したものの、自分の名前を忘れてしまった不思議な仔、“多聞の友達”。
クィアな家庭で育ったアロマンティックの子の、繊細な揺らぎ。
自分のことを、あなたのことを、わかっても、わからなくても、ここにいるという事実を語り合うことがきっとできる、ひと夏の不思議な、大阪の物語。
B6判 右開き 210ページ
定価 780 円+税 858 円(税込)
ISBN978-4-04-738425-5
初版年月日2025年6月12日
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